昔からそうだったのだと言う。
彼女はとても嬉しそうに、「昔からこういうものに惹かれる」と言う。
私の千切れて縫われた左肩を指先でなぞりながら、恍惚の表情で笑う。
全て揃っているものなんて見慣れていて、見飽きてる。
そんなもの、あたしの中では酷く陳腐なものなの。
昔から、可愛い人形を買って貰って、鋏で四肢を切り落とす。その度に親に怒られたけど、だって仕様がないじゃない。
そうしないと、楽しく遊ぶ事が出来ないから。
中学卒業前くらいかな、今までは『興味』だったものが、確実な『性癖』だと分かったのは。
事故や何かで体の一部が足りない人を見るとね。興奮しちゃうから。
ああ、あたし今、本当に嬉しい!
だってだってだってね、ほら、こんなに身近な美術品が、こんなに身近な芸術品になったんだもん!
嫌だ、泣いてるの?どうして?怖いの?
怖がらなくたって、何もしないから大丈夫だよ。ただあたしの側に居てくれればいいんだもん。
ああ、死んだ人には悪いけど、何て、死人には興味ないけど、本当に事故を起こしてくれて嬉しい!
ねえるみ、あたしの事好きなんでしょ?いつも言ってるもん、大好きーって、ずっと一緒にいようねーって。
ねえ、るみったら。ふふふ。泣いてばかりね。でも泣き顔も可愛い。可愛い可愛い可愛い可愛いよるみ!素敵よ、パーフェクトだわ、あたしの中で抜きん出て一位よ。ねえ、ふふ、嬉しいでしょう、ずっと側に居られるのよ。
食事もトイレもお風呂も着替えも、全部あたしが居ないと出来ないんだもの!
何十もの死体や怪我人が転がる中、彼女は私の左腕を、肉塊と化した私の左腕と右脚を、彼女は探し当てた。
陽の光が窓から射し込む、明るくて清潔な広い部屋。ここが今日から私の家になる訳だが、壁に打ち付けられた棚の上には、ホルマリンが並々と注がれたボトルが二つ。
中には、やはりと云うか何故かと云うか。当然のように私の左腕と右脚が存在している。
彼女は興奮するとそうなるのだろう、艶麗とも言える表情で私の喪われた箇所を執拗に撫でていたが、私の目線の先にあるものに気付き、思い出したようにその棚へ近付いた。
「うふふ、気付いた?気付いちゃったの?」
「……それ」
私が漸く声を発すると、今度は私の右脚が入ったボトルを嬉しそうに撫でる。
「ふふ、るみの白くて細い綺麗な脚。組織も潰れきった唯の“物体”には興味ないけど、あたし、貴女の脚も腕も大好きだから、他人の血でどろどろになりながら探してきたのよ」
でも、と区切り、彼女はボトルを棚に戻して私に向き直る。
「貴女の身体の一部なら、例え目玉一個でも見付けられるわ」
堂々と。自信たっぷりに。熱っぽい視線で私を捉え。彼女は高らかに宣言した。
その自信はどこから、そして何故そう思うのか、という意味を込めて「どうして」と訊ねる。
すると彼女は私が目覚めてから初めて見せる、性的興奮を込めた目ではない、熱っぽい瞳で私を見据え、冷えた私の頬を撫でながら答えた。
「決まってるじゃない。貴女を愛してるからよ」
ふわりと長い髪を揺らしながら私の唇へキスをする。
離れる彼女の微笑みを見つめながら私は静かに涙を流した。
(私がバラバラになってしまったら、きっと死んでしまう。そうしたら貴女は、きっと私を見付けようともしないでしょう)
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一発目から重いお話ですな。
お互いに依存の気がある二人、けれど彼女は自負している通り死体には興味が無い。
自分が死んだら彼女はきっと、ホルマリンに漬けられた私の腕だけを愛でて愛でて愛でるに違いない。私に興味は向かない。そうしたら私はどうなるの。
るみは彼女を自分だけのものに出来たと喜ぶ反面、複雑な想いで日々を送ります。